親族が亡くなり遺品整理の場面に遭遇すると「費用は誰が払うの?」と気になることでしょう。故人が残した物品を片付ける遺品整理では、業者への依頼などで費用が発生します。
費用を誰が負担するのかは相続人の有無など状況によって異なり、親族間のトラブルに発展しやすい問題のひとつです。
本記事では、遺品整理の費用を支払う義務が誰にあるのかを、パターン別に詳しく解説します。親族同士が円満に終わらせられるように、費用支払いの注意点やトラブル回避策も紹介しているため、ぜひ参考にしてください。
目次
遺品整理の費用は誰が払う?パターンごとに解説
 
故人が残した物品を整理する遺品整理には、不用品の処分費用や専門業者への依頼費用などがかかります。一方で、支払いに関する認識が親族間ですれ違っていると、後々大きなトラブルに発展しかねません。
前提として、遺品整理の費用は原則として故人が残した預貯金などのプラスの財産から支払います。費用の支払いが発生するのは、故人の財産から賄えない場合です。
ここからは、遺品整理の費用を誰が支払うのかについて、以下4つのパターンに分けて解説します。
- 相続人がいる場合
- 相続人はいないが連帯保証人がいる場合
- 相続人・連帯保証人ともいない場合
- 相続人が相続放棄をした場合
順番に見ていきましょう。
相続人がいる場合
もし相続財産だけで整理費用を賄えない場合は、相続人たちが不足分を負担することになります。実際の現場では、遺産分割協議が終わる前に誰かが一時的に費用を立て替え、後日、相続人同士で精算する形が一般的です。
相続人が複数いる場合、多くのケースでは民法で定められた相続割合(法定相続分)に応じて費用を分担します。
相続人はいないが連帯保証人がいる場合
亡くなった方に相続人がおらず、なおかつ故人が賃貸住宅に住んでいたケースでは、連帯保証人が関係してきます。大家や管理会社は部屋を原状回復するために、連帯保証人に対して遺品整理や清掃の費用を請求することがあります。
法的には、連帯保証人が遺品整理の費用を支払う義務はありません。しかし、契約上の責任から「原状回復」という名目で、遺品整理の費用を負担せざるを得ないのが実情です。
連帯保証人に該当する人はまず賃貸借契約書を確認してください。保証の範囲がどこまで及ぶのかを把握したうえで、慎重に対応を決めましょう。
相続人・連帯保証人ともいない場合
相続する人も連帯保証人も存在しない状況では、利害関係者からの申し立てにより家庭裁判所が「相続財産清算人」を選任します。相続財産清算人とは、故人の財産を管理・清算する役割を担う人のことで、弁護士などの専門家が選ばれることが多いです。
相続財産清算人は残された財産を売却するなどして現金化し、遺品整理の費用やその他の債務の支払いに充当します。
もし財産が全く残っておらず費用が支払えない場合は、最終的に自治体が「行政代執行」として、公費で整理することになります。
相続人が相続放棄をした場合
相続放棄の手続きを家庭裁判所でおこなうと、故人の遺産を相続する権利を放棄でき、資産も負債も一切引き継ぎません。したがって、相続放棄をした人は遺品整理の費用を支払う法的な義務もなくなります。
ただし、相続放棄をする前に自分の判断で遺品整理業者に依頼したり費用を支払ったりすると「相続する意思がある」と判断される可能性があります。相続する意思があると見なされると、後から相続放棄が認められなくなることがあるため、費用の支払いには関わらないようにしましょう。
遺品整理にかかる費用相場を間取りごとに解説
 
遺品整理の費用は部屋の広さや荷物の量、作業内容によって大きく変動するものの、一般的な目安は存在します。業者に依頼した場合の費用は、主に作業員の人数と作業時間によって決まるため、間取りが広くなるほど高くなる傾向にあります。
以下に、間取りごとの費用相場をまとめましたので、業者に見積もりを依頼する際の参考にしてください。
| 間取り | 費用相場 | 
|---|---|
| 1R・1K | 35,000円~ | 
| 1LDK | 80,000円~ | 
| 2LDK | 140,000円~ | 
| 3LDK | 180,000円~ | 
| 4LDK以上 | 220,000円~ | 
上記の相場は、あくまで基本的な作業費用の目安です。エアコンの取り外しやハウスクリーニングなどの追加作業を依頼すると別途オプション料金が発生し、さらに高額になります。
遺品整理の費用を支払う際に押さえるべきポイント
 
遺品整理の費用を支払うにあたり、トラブルが起こるケースは少なくありません。特に、相続人が複数いる場合は支払いに関するルールを明確にしておかないと、親族間の関係に影響を及ぼしかねません。
ここでは、遺品整理の費用を支払う際に必ず押さえておくべきポイントを4つ解説します。
- 相続財産から支払う場合は相続人全員の同意を得ておく
- 相続税の「債務控除」は原則として適用されない
- 見積書や領収書は保管しておく
- 費用を支払うと相続放棄ができない場合がある
トラブルを未然に防ぐために、それぞれの内容をしっかり理解しておきましょう。
相続財産から支払う場合は相続人全員の同意を得ておく
故人の遺産から遺品整理の費用を支払う場合は、事前に相続人全員の同意を得るようにしてください。一部の相続人が独断で遺産から費用を出してしまうと、他の相続人から「勝手にお金を使った」と見なされ、トラブルの原因となります。
業者に依頼する場合でも、まずは相続人全員から依頼する旨の同意を得ておきましょう。そのうえで、見積もりを取った段階で金額を全員に共有します。
また、誰がいつ、いくら支払ったのかを明確に記録しておくことで、最終的な遺産分割の際に公平な精算ができます。
相続税の「債務控除」は原則として適用されない
遺産の額によっては高額になることもあるため、遺品整理の費用を「債務控除に充てられないか」と考える人もいるでしょう。しかし、遺品整理の費用は原則として債務控除が適用できません。
債務控除とは、相続税を計算する際に故人が残した借金など、生前に発生した債務を遺産総額から差し引ける制度です。遺品整理の費用は故人が亡くなった後に発生することから生前の債務には該当しないため、原則として債務控除の対象にはなりません。
債務控除の対象となるのは、故人が生前に発生した以下のような費用です。
- 医療費の未払い分
- 税金の未納分
- 葬儀費用
- 借金 など
遺品整理の費用は相続税の計算には影響しないという点を理解しておき、控除対象となる他の費用と混同しないように気を付けましょう。
見積書や領収書は保管しておく
遺品整理業者に支払った費用の見積書や領収書は、大切に保管しておくことが重要です。見積書や領収書は、実際にいくらかかったのかを証明する客観的な証拠となり、相続人間で費用を分担する際の重要な資料になります。
特に、誰かが費用を立て替えた場合、領収書がなければ他の相続人に支払いを求める際に納得してもらえない可能性があります。
相続財産から費用を支払った場合でも、その金額が妥当であったか否かを示すために、必ず領収書を受け取り保管しましょう。
費用を支払うと相続放棄ができない場合がある
相続財産の相続放棄を検討している場合、遺品整理の費用の支払いには極力手を付けないようにしましょう。相続財産の中から、もしくは自分の財産の中から費用を支払う行為は「財産を相続する意思がある」とみなされることがあります。
もし相続を承認したと判断されてしまうと、後から家庭裁判所に相続放棄を申し立てても、受理されない可能性が高まります。
相続放棄を考えているのであれば、遺品整理には一切手をつけず、まずは家庭裁判所での手続きを優先しましょう。
遺品整理の費用の支払いでトラブルを避けるために押さえるべきこと
 
遺品整理では兄弟姉妹など複数の相続人が関わる場合、費用負担や作業分担をめぐって意見が食い違い、関係が悪化するケースも少なくありません。親族間での無用なトラブルを未然に防ぐために、事前に以下のポイントを押さえておきましょう。
- 費用負担の割合は事前に決めて文書に残しておく
- 作業内容と役割分担を事前に話し合う
- 業者選びは相続人全員の同意を得る
- トラブルが発生したら専門家に相談する
ひとつずつ解説します。
費用負担の割合は事前に決めて文書に残しておく
遺品整理を始める前に相続人全員で集まり、誰がどのくらいの割合で費用を負担するのかを明確に話し合っておきましょう。
口頭での約束だけでは、後になって「言った」「言わない」の水かけ論になり、トラブルに発展するリスクがあります。話し合った内容は簡単なメモ書きでいいので、話し合いで決めた内容を書面やメールなど、後から見返せる形で残しておくのがおすすめです。
形に残しておくことで相続人全員が合意内容を再確認でき、支払い段階での認識のズレを防げます。
作業内容と役割分担を事前に話し合う
遺品整理には不用品の仕分けや搬出、清掃、業者とのやり取りなど、多くの作業が伴います。これらの作業を特定の人に任せきりにすると、その人に大きな負担がかかり、不満が溜まる原因になりかねません。
まずは必要な作業をすべてリストアップし、それぞれの事情を考慮したうえで、公平に役割分担をしましょう。全員が少しずつでも関わることで当事者意識が芽生え、協力的な雰囲気の中で遺品整理を進められます。
業者選びは相続人全員の同意を得る
遺品整理を専門業者に依頼する場合は、相続人全員で話し合ったうえで依頼先の業者を決めましょう。独断で勝手に業者と契約してしまうと「この業者のほうが良かったのではないか」「もっと安い業者がいたはずだ」などの不満が出てきます。
まずは相続人全員で複数の業者をリストアップし、相見積もりを取りましょう。最低でも3社から見積もりを取ることをおすすめします。
各社の費用やサービス内容を相続人全員で比較検討すれば、納得できる業者へ依頼できるでしょう。
トラブルが発生したら専門家に相談する
親族間の話し合いだけではどうしても意見がまとまらず、対立が深刻化してしまった場合は、第三者である専門家に相談するのもひとつの手です。相続問題に詳しい弁護士や司法書士に間に入ってもらうことで、法律に基づいた公平な解決策を提示してもらえます。
感情的なしこりができてしまった当事者同士よりも、冷静な第三者が仲介することで、スムーズに話が進むことも多いです。多くの自治体では無料の法律相談窓口を設けているので、まずはそのようなサービスを利用してみることをおすすめします。
遺品整理にかかる費用を安くするポイント
 
遺品整理でかかる費用は決して安くないため、できる限り出費を抑えたいと考えるものです。実際に、故人が住んでいた家の立地や間取り、遺品の量によっては数十万円の費用がかかることも珍しくありません。
しかし、工夫次第では業者に支払う費用を大幅に節約できる可能性があります。遺品整理にかかる費用を少しでも安くするためのポイントは、以下の4つです。
- 自分たちで仕分け・処分をおこなう
- 複数の遺品整理業者から相見積もりを取る
- 遺品買取サービスを利用する
- オプションサービスを必要最低限に絞る
無理のない範囲で取り入れてみてください。
自分たちで仕分け・処分をおこなう
遺品整理の費用の中で大きな割合を占めるのが、作業員の人件費です。手間や時間がかかるほど、人件費は高額になります。
人件費を少しでも抑えるために、業者に依頼する前に、自分たちでできる範囲の仕分けや処分を進めておくことをおすすめします。不用品を可燃ごみや資源ごみなどに分別するだけでも業者の作業時間を短縮でき、人件費を数万円単位で抑えられるでしょう。
また、不用品の処分は自治体のごみ収集を利用すれば、業者に依頼するよりもはるかに安く済ませられます。
複数の遺品整理業者から相見積もりを取る
遺品整理業者を選ぶ際は、最初に見つけた1社で決めるのではなく、必ず複数の業者から見積もりを取りましょう。最低でも2〜3社に連絡し、現地を訪問してもらったうえで詳細な見積もりを出してもらう「相見積もり」が基本です。
料金体系やサービス内容は業者によって大きく異なるため、複数の見積もりを比較することで、適正な相場価格を把握できます。手間はかかるものの、相見積もりを取ることで不当に高い料金を請求する悪質な業者を避けられます。
遺品買取サービスを利用する
遺品の中には骨董品やブランド品、まだ新しい家電など、価値のある物品が含まれている場合は、買取サービスを利用すると良いでしょう。多くの遺品整理業者は買取サービスも提供しており、価値のある物品を買取りしてもらうことで、その金額を整理費用から差し引いてもらえます。
不用品として処分するはずだった物が売れれば、結果的に遺品整理の総費用を安く抑えることにつながるでしょう。
なお、遺品業者に買取り依頼する際は「古物商許可」という許可を保有しているかどうかの確認を忘れないでください。
オプションサービスを必要最低限に絞る
遺品整理業者によっては、遺品の供養やハウスクリーニング、エアコンの取り外しといったさまざまなオプションサービスを提供しています。これらのサービスは便利ですが、不要なものまで追加すると費用は高くなってしまいます。
業者に任せるべき作業を見極め、可能な範囲で自分たちでおこなうようにしましょう。
オプションサービスに該当する作業は業者によって異なります。そのため、見積もりの段階で基本料金に含まれる作業と、オプションに該当する作業を明確にしておきましょう。
遺品整理の費用は誰が払うのかについてまとめ
 
遺品整理の費用は原則として故人の遺産から支払いますが、不足分は原則として相続人が支払うことになります。相続人が支払う場合はトラブルを避けるために、費用負担の割合や業者選びについて事前に全員で話し合い、合意しておくことが重要です。
また、遺品整理の費用は数十万円単位でかかるため、少しでも負担を抑えるために費用を安くする方法を取り入れることをおすすめします。複数の業者から相見積もりを取ったり、買取りサービスを利用したりするだけでも、数万円単位で費用を抑えられます。
費用の支払い義務がある人と分担を明確にし、相続人同士で揉めることなく遺品整理を済ませましょう。
遺品整理を業者に依頼しようと考えているものの、依頼先に迷われている方は「遺品整理みらいへ」にご相談ください。当社は広島市の一般廃棄物収集運搬業を保有しているため、不要な遺品の回収・処分まで承っています。事前に現地での見積もりにも対応しているため、正確な金額を算出いたします。電話・メール・LINEにて受け付けておりますので、まずは気軽にお問い合わせください。