賃貸住宅で暮らしていた家族が亡くなり、遺品整理をいつまでに終えればよいのか不安に感じる人は多いでしょう。遺品整理そのものに法律上の期限はないものの、賃貸では賃貸借契約の解約日を意識しなければなりません。
家賃の負担を抑えるためにも、まずは管理会社へ連絡し、退去日を確定させることから始めましょう。
本記事では、賃貸の遺品整理に期限が生まれる理由を法律と契約の両面から整理し、そのうえで、退去日から逆算して終わらせる手順を解説します。期限に間に合わないときに取るべき行動もわかるようになるので、ぜひご一読ください。
賃貸の遺品整理に期限はある?法的な観点から解説
賃貸で暮らしていた家族の遺品整理をおこなう際は、契約上の期限を意識する必要があります。遺品整理の期限について、以下4つの観点から解説します。
- 遺品整理そのものに法律上の期限はない
- 賃貸借契約は死亡しても自動では終わらない
- 実質の期限は契約を解約する日になる
- 公営住宅は自治体の規定で期限が決まる
計画を立てるうえで重要なポイントなので、ぜひ参考にしてください。
遺品整理そのものに法律上の期限はない
遺品整理をいつまでに終えるべきか、定めた法律はありません。四十九日までに終わらせる決まりもなく、あくまで宗教的な慣習です。
持ち家であれば、遺族の気持ちが整うまで待っても問題ありません。実際に、故人が所有していた一戸建てに相続人が住み続ける場合、片付ける日を家族の予定に合わせて決められます。
期限が生まれるのは、賃貸借契約や相続手続きが絡むときです。賃貸住宅で期限を意識する必要があるのは、法律ではなく契約や手続きの都合だと覚えておきましょう。
賃貸借契約は死亡しても自動では終わらない
賃借人が亡くなっても、賃貸借契約は自動では終わりません。
民法896条では、相続人が被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継すると定められています。つまり、部屋を借りている状態も相続人へ引き継がれるため、契約は続いたままです。契約が続く以上、家賃の支払い義務も相続人が負わなければなりません。
実際に、賃借人が亡くなったアパートを放置している間も、解約日までは家賃が発生し続けます。賃貸契約を解約するためには、相続人の側から解約の手続きをする必要があります。
参照:民法|e-Gov法令検索
実質の期限は契約を解約する日になる
賃貸の遺品整理で期限を決めているのは、契約を解約する日です。国土交通省の賃貸住宅標準契約書では、解約と明け渡しについて以下のように定めています。
| 項目 | 定め |
|---|---|
| 解約の申し入れ | 少なくとも30日前 |
| 物件の明け渡し | 契約が終了する日まで |
上記より、解約を申し入れた日からおよそ1ヵ月が、遺品整理に使える期間です。例えば、4月10日に解約を申し入れると契約が終了するのは最短で5月10日です。
作業できる日数を把握するために、まずは申し入れの日を決めましょう。
公営住宅は自治体の規定で期限が決まる
公営住宅で暮らしていた家族の遺品整理は、自治体の規定に沿って期限が決まる仕組みです。例えば、都営住宅では名義人が亡くなると使用承継ができず、住宅返還届を出して期限内に部屋を返さなければなりません。使用承継とは、同居していた親族が引き続き住み続けるための許可を受ける制度です。
参考までに、東京都で公営住宅を管理しているJKK東京では、片付けの目安は1ヵ月半程度と案内しています。同居していた親族がいる場合は、以下の内容を管理窓口へ確認しておきましょう。
- 使用承継の申請可否
- 住宅返還届の提出時期
- 片付けの目安期間
使用承継の許可を受けないまま6ヵ月を過ぎると、近傍同種の住宅(近隣にある同程度の住宅)の家賃相当額を負担します。規定は自治体ごとに異なるため、早めに問い合わせましょう。
参照:名義人が死亡しました。1人で住んでいたため、住宅を返還します。|JKK東京
参照:使用承継制度(平成19年8月25日から)|東京都住宅政策本部
賃貸の遺品整理を期限内に終わらせる手順
賃貸住宅での遺品整理は、契約期間内に作業を終わらせる必要があります。段取りを間違えると、退去日までに終わらない事態も考えられます。
スムーズに進める手順は、以下の5ステップです。
- 管理会社へ死亡の事実を届け出る
- 賃貸借契約書で退去日を確定させる
- 退去日から逆算して作業日を割り振る
- 貴重品を最優先で探し出す
- 期限までに部屋を明け渡す
順番に見ていきましょう。
管理会社へ死亡の事実を届け出る
賃貸の遺品整理で最初にすることは、管理会社および大家への連絡です。連絡の際は、以下の内容を伝えてください。
- 契約者が亡くなった事実
- 窓口になる相続人の氏名
- 相続人の連絡先
退去するまで家賃がかかるため、連絡が遅れるほど支払う金額は増えます。この段階で解約手続きについて案内されるので、聞いておきましょう。
賃貸借契約書で退去日を確定させる
退去日を確定させるために、以下の項目を契約書で確認してください。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 解約予告期間 | 少なくとも30日前の申し入れ |
| 随時解約の条項 | 30日分の賃料支払いによる解約 |
| 敷金の精算条件 | 返還額から差し引かれる費用 |
| 原状回復の負担範囲 | 借主と貸主の分担 |
国土交通省の標準契約書では、契約終了日は予告した日から最短で30日後です。急いで部屋を空けたい場合は、30日分の賃料を支払って随時解約する方法も選べます。
逆に、遺品整理作業に時間を要しそうな場合は、30日より後に退去日を設定する方法もあります。
条件は契約ごとに違うため、ご自身の契約書の内容を確認してください。
退去日から逆算して作業日を割り振る
確定した退去日から逆算し、作業する日を割り振ります。明け渡し当日を作業の完了日にすると、原状回復や鍵の返却が間に合いません。必要な日数を差し引いた日を、片付けを終える日として設定しましょう。
例えば、5月10日が契約の終了日であれば、5月初旬までに荷物の搬出を終える計画にします。遠方から通う場合は、移動にかかる日も計算に入れてください。
作業できる日数が見えた段階で、ご自身で運べる量か業者を入れるかを判断します。
貴重品を最優先で探し出す
賃貸住宅の遺品整理では、以下の貴重品を最優先で探し出してください。
- 通帳と印鑑
- 保険証券
- 年金手帳
- 不動産や借入の契約書類
とくに契約関係の書類を紛失してしまうと、保険金請求や相続にまつわる手続きができなくなる恐れがあります。
タンスの引き出しや仏壇、郵便物がまとまっている場所から確認しましょう。現金や有価証券は、相続人が立ち会える状態で数えてください。
見つけた品をリストにして相続人の間で共有しておくと、後から探し直す手間がかかりません。
遺品整理で捨ててはいけない物について詳しくは、以下の記事で解説しています。ぜひ参考にしてください。
参考:遺品整理で捨ててはいけないもの14選!理由や注意点も解説
期限までに部屋を明け渡す
賃貸契約の終了日までに、借主は物件を明け渡す義務があります。賃貸住宅標準契約書の第14条1項に定めがあり、明け渡す日は事前に貸主へ通知してください。
残置物がある状態では明け渡しと認められず、家賃が発生し続けます。明け渡しの当日は、残置物がない状態で臨みましょう。退去の際は、貸主の立ち会いで室内の状態を確認し、問題なければ鍵を返却する流れが一般的です。
退去期限までに終わらないときの選択肢
遺品の量が多かったり多忙で作業に取りかかれなかったりなど、退去日までに遺品整理が終わらないときもあるかもしれません。終わる見込みがない場合は、以下3つの選択肢を検討しましょう。
- 大家・管理人へ退去日の先延ばしを申し入れる
- 即日対応できる遺品整理業者を手配する
- 残す遺品をトランクルームへ移す
慌てて作業するよりも適切な選択肢となりえるので、ぜひ参考にしてください。
大家・管理人へ退去日の先延ばしを申し入れる
退去日に間に合わないと判断した段階で最初に取る手段が、大家や管理人への相談です。次の入居者が決まっていなければ、応じてもらえる場合があります。
ただし、延長した期間分の家賃が別途発生するため、先延ばしするとしても短期間にしましょう。相談がまとまったら、変更後の退去日を書面かメールで残してください。
口頭だけでは、後から食い違いが起きても証明できません。
即日対応できる遺品整理業者を手配する
期間が足りないまま退去日が近づいたときは、遺品整理業者への依頼が有効です。最短即日の対応を謳う業者であれば、搬出から簡易清掃まで1日で終わる場合もあります。
依頼する前に、以下の内容を複数社へ確認しましょう。
- 対応できる最短の作業日
- 作業範囲と追加料金の有無
- 貴重品の捜索の可否
- 一般廃棄物収集運搬業の許可
家庭から出る不用品を回収するには、一般廃棄物収集運搬業の許可が必要です。許可のない業者へ任せると、回収した遺品を不法投棄される恐れがあるため、見積もりを取る前に確認してください。
残す遺品をトランクルームへ移す
仕分けが終わらない遺品は、部屋を空けるためにいったんトランクルームへ移す方法もあります。明け渡しを先に済ませれば、家賃の発生を止められます。
上述した退去日を先延ばしする方法が使えるのであれば、トランクルームの利用料とどちらが安く済むか比較したうえで判断しましょう。トランクルームであれば、思い出の品や書類など手放せない物の置き場としても使えます。
賃貸住宅で遺品整理をする際に注意すべきポイント
賃貸の遺品整理では、期限の他にも費用や相続の扱いでつまずきやすい部分があります。作業の際は、以下3つのポイントを押さえておきましょう。
- 家賃は退去日まで発生し続ける
- 退去予告は退去の1ヵ月前までに出す
- 相続放棄を考えるなら遺品整理に手を付けない
負担を抑えながら手続きを進められるので、ぜひご一読ください。
家賃は退去日まで発生し続ける
賃貸住宅の家賃は、契約期間中は満了日まで発生します。民法896条により相続人が権利義務を承継するため、支払いは相続人の負担です。
共益費や駐車場の料金も、契約が終わるまで発生する点は変わりません。金融機関へ死亡した旨を伝えると口座は凍結されるため、当面は相続人が立て替えることになります。
明け渡しが早いほど負担は軽くなるので、片付けはできるだけ早めに始めてください。気持ちの整理がつかない場合でも、連絡と退去日の確定だけは先に済ませましょう。
退去予告は退去の1ヵ月前までに出す
退去日の連絡をする際は、1ヵ月前までにおこなう必要があります。国土交通省の賃貸住宅標準契約書では、少なくとも30日前の申し入れと定められています。
申し入れが遅れると契約の終了日も後ろにずれ、その間の家賃も負担しなければなりません。例えば、死亡から2週間後に予告を出すと、部屋を空ける期限は死亡日から6週間後です。
予告の方法として、書面や所定の様式を指定している契約もあるため、記載を確認してください。管理会社への連絡と同時に解約予告を出すか、相続放棄の可能性を踏まえて保留するかを先に決めましょう。
相続放棄を考えるなら遺品整理に手を付けない
相続放棄を考えている人は、相続の決断をするまでは遺品整理に手を付けないでください。
民法921条1号では、相続財産の全部または一部を処分すると単純承認したものとみなされます。単純承認とは、プラスの財産も借金もすべて引き継ぐ相続の形を指し、いったん成立すると相続放棄は選べません。
処分にあたる可能性がある行為は、以下のとおりです。
- 遺品の売却や廃棄
- 思い出の品の親族への分配
- 賃貸借契約の解約手続き
- 故人の預金からの家賃の支払い
相続放棄をするかどうかの判断ができるまでは、退去の連絡を入れるのは後回しするのも良いでしょう。相続をすると決断ができたタイミングで退去の連絡を入れ、遺品整理作業に進んでください。
参照:民法|e-Gov法令検索
相続放棄後に遺品整理をすることについて詳しくは、以下の記事で解説しています。ぜひ参考にしてください。
参考:相続放棄後に遺品整理をする際のポイント5選|注意点や管理義務のある場合を紹介
賃貸住宅の退去日以外で遺品整理の際に意識すべき期限
賃貸住宅に住んでいる人が亡くなった際は退去日を意識して遺品整理をおこなうべきですが、他にも以下4つの手続きも期限があることを押さえておきましょう。
- 相続放棄
- 準確定申告
- 相続税の申告
- 生命保険の請求
期限を把握していないと、後々になってあらゆる手続きに支障をきたす恐れがあります。順番に見ていきましょう。
相続放棄
借金や滞納した家賃が資産を上回るときの選択肢が、相続放棄です。民法915条1項では、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヵ月以内に、家庭裁判所へ申述すると定められています。
期間内に判断できない場合は、家庭裁判所へ期間の伸長を請求する方法も検討してください。
3ヵ月を過ぎると単純承認したものとみなされるため、財産と負債の確認を早めに進めましょう。判断に迷うときは、期限前に弁護士や司法書士へ相談してください。
参照:相続の放棄の申述|裁判所
準確定申告
亡くなった人に代わって相続人がおこなう所得税の確定申告である準確定申告は、相続の開始を知った日の翌日から4ヵ月以内に済ませなければなりません。必要になるのは、故人に事業所得や不動産所得があった場合です。
給与所得だけで年末調整が済んでいる場合は、準確定申告が不要なケースもあります。準確定申告の際は、以下3種類の書類が必要です。
- 源泉徴収票
- 医療費の領収書
- 生命保険料の控除証明書
遺品整理では書類をまとめて保管し、処分しないよう仕分けておきましょう。相続人が複数いる場合は、連署で提出してください。
参照:No.2022納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)|国税庁
相続税の申告
相続税の申告と納付の期限は、死亡したことを知った日の翌日から10ヵ月以内です。取得した財産の合計額が基礎控除額を超える場合に必要な手続きになります。
遺品整理で何がどれだけあるのかを把握しなければ、申告はできません。財産を確認する方法を、以下の表にまとめました。
| 見つかる物 | 確認できる内容 |
|---|---|
| 不動産の権利証 | 土地や建物の所有 |
| 預金通帳 | 残高と取引先の金融機関 |
| 証券会社からの郵便物 | 株式や投資信託の保有 |
郵便物は退去後に届いた分も含めて、申告が終わるまで保管しておきましょう。
生命保険の請求
生命保険の保険金を請求する権利は、行使できるときから3年で時効になります。保険法95条1項に定めがあり、期限を過ぎると受け取れません。
保険証券や保険会社からの郵便物を処分してしまうと、契約の存在そのものに気づけなくなります。遺品整理では保険関係の書類を別にまとめ、請求が終わるまで保管しましょう。
契約先がわからない場合は、生命保険協会の生命保険契約照会制度で有無を確認できます。利用料はWeb申請で6,000円、書面申請で7,000円です。
賃貸住宅で遺品整理の期限があるかどうかについてまとめ
賃貸住宅の遺品整理そのものに、法律上の期限はありません。実質の期限を決めているのは賃貸借契約の解約日で、標準契約書では少なくとも30日前の申し入れと定められています。
契約者が亡くなっても契約は自動で終わらず、家賃は明け渡しの日まで相続人の負担です。まずは管理会社へ連絡して退去日を確定させ、退去日から逆算して作業日を割り振りましょう。
間に合わないときは、退去日の延長や業者への依頼、トランクルームの利用を検討してください。退去日の他にも相続放棄や準確定申告、相続税の申告、生命保険の請求に期限があるため、書類は捨てずに残しておきましょう。
賃貸住宅からの退去日が迫っているものの、遺品整理作業が終わらないとお悩みの方は、「遺品整理みらいへ」までご相談ください。最短即日での作業も承っており、過去にはアパートの退去日が迫っていることを理由にご相談いただいた事例もあります。見積もりは電話・メール・LINEにて受け付けており、無料で対応いたしますので、まずは気軽にお問い合わせください。